お月さまいくつ

オタクの日記

『ボーグマン』レビュー/弄ぶように侵略

 
ボーグマン

 

 そして彼らは自らの集団を強化するため地球へ襲来した

 

狩人や聖職者たちが森の地面をヤリやオノで突けば、巣穴を荒らされた鼠のように男は地面から這い出る。狩人と聖職者は犬引連れ銃を持ち、まるで害獣でも駆除するみたいだ。土の中で眠っていた男たちは、服や顔に泥をつけ、薄汚れた格好で森を抜け逃げてゆく。男たちは追っ手を逃れ、また新しい住処を探し始める。

 

 

 

ボーグマン

 

『ボーグマン』は目的を持たない殺人集団の話だ。"殺人集団"と呼んでもよいのかも謎である。集団の中の1人、カミエルは追手を逃れ、ホームレスを装いある家へ風呂を貸してくれないかと詰め寄る。そこにいたのが夫婦のマリーナとリチャードである。無礼な態度で詰め寄るカミエルを夫のリチャードは殴って追い払うものの、こっそり敷地の一室に隠れていたカミエルを、妻のマリーナが内緒で介抱し始めことでカミエルによる一家侵略が始まるのだ。

この映画で学ぶのは、人を疑うことも時には必要ということだね。人を疑うのはとてもしんどいからイヤなんだけど。それから、与えることに見返りを求めないこと。とはいってもこの映画、現実的な教訓は置いておいて、実は童話のようなお話なのである。

傷が治ればカミエルには家から出て行ってもらうはずだったマリーナなのだが、夫とのコミュニケーション不足に、寂しさのあまり彼が恋しくなってしまう。そして彼女は、違う形でカミエルと再会することを望むのだ。それを知ったカミエルは、仲間へと電話をかける。そして彼は仲間と共に、計画的な手順で、彼女の家の庭師を殺すことで新しい庭師として家へと入り込んでくるのだ。

 そんな…、あまりに恋しいからって知りもしないホームレスを好きになるなんて…ってちょっと引いたよ。でも映画は細かいこと気にしちゃダメなんだ。このカミエルという男は庭師だけではなく、邪魔になる人々を次々と始末していく。おかしなほどに手順よく誰にも疑いを持たれないまま。そしてこの夫妻だけではなく、夫妻の子供達やベビーシッターまでも、スルスルと洗脳されてしまうのだ。

 

 

ボーグマン

 

映画ではこの「洗脳」というのが、とても曖昧に描かれている。この殺人集団たちはまるで魔法や呪いでもかけるみたいに、子供たちの警戒をとき、自分の下部のようにしてしまう。大きな犬でさえ、男の言葉にすんなり従う。家族らが眠る頃、何をするわけでもなく裸で彼らを見下ろしている。仲間の印のように背中に皆同じ傷を持っている。儀式的なものまであるのだ。全てが謎である。そのため、冒頭で男たちを追いかける聖職者の姿を見ているものだから、この集団がちょっとした悪さをする妖精や悪魔のようにも見える。”殺人”を取り扱ってはいるものの、森の中へと消えていく彼らを見ながら、童話の絵本でも読んでいる気分になったのだ。

 

 

ボーグマン Blu-ray

ボーグマン Blu-ray