お月さまいくつ

オタクの日記

『フッテージ』レビュー/失踪する子、惨殺される家族

 

フッテージ

 

"WHERE ARE YOU?"(君はどこへ消えた?)

 

"Box of Films How did it get there?"(なぜ屋根裏にフッテージが?)

 

冒頭、ジリジリと焼けるようなノイズのするなか回り続けるフィルムが映し出しているのは、大きな木に首を吊った4人の人間だ。頭に麻袋を被り、腕は縛られ、足は辛うじて地面に着地しているものの、その数秒後には首の縄を引っぱられ完全に宙に浮いてしまう。この映像を見ているのはまだ私たち鑑賞者だけである。

今作の主役「エリソン」は、私たちよりも後にこの映像を見ることとなる。エリソンは実際の未解決事件を取り扱うノンフィクション作家だ。まだ未解決だった事件を個人で調べ上げ、真相を本にする。一度は本が売れ一躍ベストセラー作家となるのだが、その後は不発。もう一度復活をと、今度は行方不明になった少女とその家族が惨殺された未解決事件を取り上げることにするのだ。そのために彼は殺害された家族の住んでいた家へと、自分の家族を引き連れて引っ越してくる。(ちょっと正気じゃない。)もちろん、家族には引っ越し先の家で残忍な事件があったなどとは話していない。

 

 

 

 

ゆるいニットを羽織っていかにも世間とはかけ離れていそうな、いわゆる自由人そうなエリソンは、意気揚々と新家を片づけながら、屋根裏でフィルムと映写機の入った箱を発見する。フィルムには「家族一緒に」「バーベキュー」などと手書きで記されており、どうやら家族の日常を記録したホームビデオのようだった。こんなものが屋根裏に放置してあるのもおかしな話である。気になったエリソンは、さっそくその夜に仕事に取り掛かると同時にフィルムを鑑賞するのだが、目にしたものは、冒頭で私たち鑑賞者が見たものと同じ首を吊られる家族の映像だった。この家族こそが、エリソンの新居に以前住んでおり、そこで無残に殺されてしまった一家なのだ。しかもそれだけじゃなく、フィルムは合計8本あり、そのひとつひとつに一家殺害の一部始終が記録されていた。彼は驚きながらも、これは本を書くための大きなチャンスだと考え、真相の手掛かりを探し始める。

 

 

フッテージ

 

今作品はとっても自分好みだった。映像の美しさもさることながら、わたしがホラー映画に必要不可欠だと思っている音楽もとても素晴らしい。音楽を担当しているのはChristopher Young(クリストファー・ヤング)さんという、映画界でも有名な作曲家さんみたい。他にも生活音を随所に散りばめ、映画は鑑賞者の耳を敏感にさせようとする。キーボードを叩く音、マウスのクリック音、プリンターが起動し、ギチギチと写真の刷られる音、ウイスキーがエリソンの喉を滑れば、必ずグラスの中の氷も音を鳴らす。中でも印象的なのは、フィルムの再生されるジリジリと焼けるような音ではないだろうか。これらの音も、いつしか異質なものへと変わってゆく。

 

ストーリーとしては、一本一本フィルムを確認し調べ上げていくうちに、引っ越した新居で不可解なことが次々と起こりエリソンが精神をすり減らしていくのだが、真相を追っているはずの彼は、いつしか呑み込まれる立場へとすり替わってしまう。エリソンがそのことに気づく頃には、彼の結末は逃げられない恐ろしいものへと仕上がっている。私たちは興味本位でエリソンと一緒に殺害フィルムを見つめ、真相を追う。この映画はそれが心地よい。不幸は私たちに飛び火することなく、エリソンだけに降り注ぐ。私たちはエリソンの不幸もまた箱に並べられたフィルムの一本として覗くことが出来るのだ。

 

 

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 それから、今作のサウンドトラックはとてもお気に入り。サウンドトラックはスポティファイでも配信しているよ。どの曲も良いんだけど、Rot Not, Want NotやMy Sick Pianoが個人的にグッとくる。※サウンドトラックの曲名にはネタバレが含まれているから注意してね。

 

Sinister

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