お月さまいくつ

オタクの日記

『マジカル・ガール』レビュー/魔法少女は甘くない

 

マジカル・ガール

 

「願い事ノート」

 

願いごと1

誰にでも変身できる

 

願いごと2

メイコ・サオリが歌手のメグミ用にデザインした「魔法少女ゆきこ」のドレス

 

願いごと3

13歳になる

 

マジカル・ガール

 

幼い頃、あなたは何に夢中だっただろうか。誰しも夢をみるものがあったのではないだろうか。恐竜や宇宙船、魔法使いに正義のヒーロー…。

少女アリシアの憧れは『魔法少女ユキコ』だ。日本語のテーマソングが流れる中、彼女はひとりで踊る。ほっそりとした手には魔法のステッキの代わりと思われる玩具の花を握り、向き合う鏡にはショートヘアの彼女の顔が映っている。しかしそれも束の間、彼女は画面から姿を消してしまう。意識を失い倒れてしまうのだ。アリシアは白血病を患っている少女だった。

その後、外出していた父親が家へと戻り、倒れていた彼女を見つけることとなる。父親は驚いて彼女に声をかけ、慌てて病院へと電話をかける。

 

 

 

魔法少女に憧れる娘の夢を叶えるために、父親のルイスが頭を悩ませることでこの物語はスタートを切る。

娘の夢とは『魔法少女ユキコ』のドレスとステッキを身に着け踊ることだった。しかしこのドレスとステッキがプレミア付きのとんでもない品。とんでもない額。お金はない。でも娘の命も長くはない。そこで父親ルイスは人から盗むことを考える。娘のために、ある女性を脅迫し、金を得ようと試みる。ある女性というのが、ある意味ルイスと運命的と言ってもいい出会い方をするバルバラという名の女性。彼女もまた「マジカル・ガール」だったのだと、鑑賞者はエンディングを迎えると同時に知ることとなるのだ。

 

今作品は様々な人間の事情が絡み合い、ルイスが面白いほど簡単に破滅へと頭を突っ込んでしまう。娘の幸せを願うはずが、肝心な娘さえも滑り落としてしまう。皮肉にも、「マジカル・ガール」たちはその引き金となる。

 

 

マジカル・ガール

 

「窓から投げたらどんな顔するかと思って 」

 

「守護天使だわ 」

 

始終静かな作品だが、夢溢れる『マジカル・ガール』という甘い響きとは別に映し出される現実の苦さが、とても見応えのある作品だった。現実は劇中に登場する人物だけではなく、鑑賞者の心も打ち砕いてくれる。

それにしてもバルバラは本当に魅力のある女性だった。題名の『マジカル・ガール』は、彼女を指しているのかな?と思ったが、男性を見事に落としていく彼女の姿はどちらかといえば「悪魔」だ。目的は違えど男性たちは皆、一度はバルバラの元から離れるものの、再び引き寄せられている。彼女の詳細が劇中で全て明らかにならないのも、想像を掻き立てられるようで興奮してしまう。バルバラの夫に寄り沿う気だるげな表情は、自由を奪われた女性のようにも見えるし、今か今かと噛みつこうと鋭い牙を隠す犬のようにも見える。いわゆる彼女のメンヘラちっくなところがすごくツボだった。

 

個人的に、バラバラの時間枠の中でオチへとストーリーが進んでいく物語が好きなのだけれど、それに加え、暗く静かな映画が好きな人にはオススメできる作品だ。スペイン産の映画だけれども、スペインらしい華やかさは一切ない映画だ。

 

 

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