She's Lost Control

記録とメモ。

『フォックスキャッチャー』レビュー/世界一を目指す選手とコーチの結末

 
フォックスキャッチャー

 

「コーチとして諸君に望む

レスリング界を制し人生の勝者になれ

そしてまた、よき国民となれ

アメリカのために」

 

これは事実に基ずくフィクションだ。オリンピックでメダルを取得しレスリング界で名の知れたシュルツ兄弟。弟のマーク・シュルツは兄のデイヴ・シュルツの教えの元で日々トレーニングを積んでいた。しかしある日、マークの元へジョン・デュポンと名乗る男の代理人から電話がかかってくる。受話器越しに彼は”フォックスキャッチャー”へ来てくれと言う。

 

 

 

フォックスキャッチャー

 

「フォックスキャッチャー」とは、デュポン家の所有する農場の名前だ。コーチとなるジョン・デュポンはそこへレスリング施設を建設し、オリンピックでメダルを取得することを目標としシュルツ兄弟を招きいれる。最初は弟のマークが招かれ、完璧な設備、多額な手当金をデュポンに提示され、兄の元を離れることとなる。

弟のマーク・シュルツは寡黙だ。笑みも少なく、人との交流も少ない。ひたすらトレーニングに励むシーンが多い。それに比べ兄のデイヴ・シュルツは妻や子供を持ち、人当たりも良く、誰にでも物腰柔らかく笑う。この2人は幼い頃に両親が離婚し、惨めで厳しい生活を強いられてきた。まだ2歳だったマークには、デイヴが親代わり。そのためマークが27歳になった今でも、デイヴはまるで母親や父親のように彼に言葉を掛ける。しかし、”フォックスキャッチャー”へ来たことにより二人の運命は揺らいでいく。その引き金を引くのが、ジョン・デュポンである。

 

フォックスキャッチャー

 

 ジョン・デュポンは財閥の資産相続人の一人であり、母親と同じ屋根の下で暮らしている。農場では競走馬が育てられ、部屋には馬術に関するトロフィーや写真が飾られている。母親は馬が好きだ。しかし息子の好きなレスリングには抵抗を持っている。母親は息子の前で「レスリングは下品な競技だ」と吐いてみせる。これにジョン・デュポンは反論することもない。この親子の関係が、ジョン・デュポンを酷く支配していたのではないだろうか。彼にはいつでも「偉大であれ」という考えがあった。オリンピックで金メダルを取り、指導者として、アメリカ国民として、手本となるような偉大な人物になる。それは母を認めさせるひとつの手段でもあった。そういった妄想に憑りつかれ、全てをコントロールしようとするあまり、彼は自身のコントロールを失ってしまう。そしてそこへ、マーク・シュルツとデイヴ・シュルツは巻き込まれてしまうのだ。

同じ夢を追うもの同士だったはずのジョン・デュポンとシュルツ兄弟。それをデュポン本人の手で崩壊させてしまう結末は悲惨である。

 

 

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