She's Lost Control

記録とメモ。

『ビザンチウム』 レビュー/我が子を愛す吸血鬼

 
ビザンチウム

 

生まれた子は窒息させるはずだった

だが彼女は赤子を見つめ

心臓の鼓動を聴き

赤子の血の匂いをかぎ

愛に打ち負かされた

  

 

 

ビザンチウム

 

母親の子に対する深い愛は何百年もの昔から作品の題材にされてきた1つだと思う。

『ビザンチウム』はヴァンパイアの姉妹の物語だ。200年ほど生きた彼女たちは、ネオンの光る騒がしい街の中を歩く。放浪生活を続ける姉のクララと妹のエレノアは、人間の血を吸うことで生き延びている。娼婦をし生計を立てるクララは、エレノアの母親の代わり。「母親は死んでしまって、エレノアは長い間孤児院にいた」と彼女は語る。

 

ビザンチウム

 

死を覚悟した者だけが永遠の命を得る

 

ヴァンパイアと言えば、「日光に弱い」「鏡に姿が映らない」などの特徴があるが、この作品のヴァンパイアには当てはまらない。彼女たちは昼間でも外に出るし、鏡にも姿が映る。唯一当てはまる特徴と言えば、招かれなければ家の中へと入れないことぐらいだ。それほど難しすぎる障害でもない。だからヘマさえしなければ、簡単に正体を知られることもなかった。けれどもエレノアには重荷だった。彼女は秘密を守り続ける限り、孤独である。秘密を知るのはクララだけ。友達を作ることも出来ない。後にエレノアはレストランで出会った男性フランクに惹かれるのだが、秘密を守るために彼を拒んでしまう。

秘密を打ち明け自由になりたいエレノアと、エレノアを護るために秘密を守れと厳しく言うクララ。ヴァンパイアだからと言って、人間の親子とそう変わらない2人。だからこそ、この物語の見どころは「愛」なのかなと思った。

 

クララとエレノアはヴァンパイアであり、血を飲まなければ生きてはいけないわけだが、エレノアの血を飲むための流儀というものがとても良かった。エレノアがターゲットにするのは死を待つ老人ばかり。そのため老人は死を前に、彼女を見て自分の元へと天使が来てくれたのだと思い込む。そんな彼らに向かって「あなたに平穏を 光が導かれますように」と囁くエレノアは本当に天使のように見えた。自分の中のヴァンパイアのイメージが塗り替えられるシーンでもあった。

 

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