She's Lost Control

記録とメモ。

天才の偉業と愛『イミテーション・ゲーム/エニグマと天才数学者の秘密』感想

 

イミテーション・ゲーム/エニグマと天才数学者の秘密
 
Morten Tyldum  "The Imitation Game"  (2014)

 

 

評価:☆☆☆☆☆(満点!) 

 

歴史ドラマの映画はたまに観るんですが、今作品すごく好きでした。

「実際にこんな人物がいたんだ」と知ることでとても勇気を貰えます。

『イミテーション・ゲーム』は戦争時代を生きた数学者の話ですが、生きることに居心地の悪さを感じている人にも観てもらいたくなるような映画でした。

 

 

 

あらすじ

 

第二次世界大戦。ナチス・ドイツが用いていた暗号機「エニグマ」の解読に挑む数学者、アラン・チューリング(ベネディクト・カンバーバッチ)の物語。

 

 

今作品はアンドリュー・ホッジスによる伝記『Alan Turing: The Enigma』を基に脚色されたお話だそうです。

 

 

 

『イミテーション・ゲーム/エニグマと天才数学者の秘密』感想:アランのクリストファーに対する想い

 

今作品は暗号「エニグマ」を解読することを主軸として話が進んでいくのですが、なによりも私が魅せられたのは、アランのクリストファーに対する想いでした。

 

アランは学生の頃想いを寄せていた「クリストファー」の名前をマシーンに名づけています。

周りから見ればアランは変わり者で孤独な人のように見えますが、マシーンを完成させることに何よりも熱を持っていた彼は、けして孤独ではなかったとエンドで分かります。

すごく心を打たれました。

アランにとってクリストファーは人生においての光であり、クリストファーの存在あってこその「アラン」だったのです。

亡くなってしまったクリストファーの喪失の大きさを考えると、政府に「マシーンを奪われるかもしれない」と不安で涙を流すアランの気持ちがどれほど切ないことか。

その切なさを思うと同時に、アランの一途で純粋な心にとても惹かれました。

アランがマシーンを完成させることは、クリストファーの魂を再生しているようにも見えました。

 

 

 

 

「普通」とはいったい何なのか 

 

わたしがこの物語を気に入るのは、「普通とはいったいなんなのか?」という疑問が含まれているからだと思います。

とくに、アランがジョーンに「自分は同性愛者だ」と打ち明けるシーンです。

ジョーンは狼狽えるアランに「だからなんなの?」とキッパリと突き返し、「ずっとそう思ってた。私たちは人と違う」と続けます。

「私たちなりに愛し合い、生きていけばいい。あなたは完璧な夫じゃないし、私も完璧な妻になる気はない。あなたの帰りを待ってラムなんか焼かない」

このセリフに私はすごく勇気を貰いました。自分の傷ついた心が癒されたように感じました…。

結局アランはジョーンを危険から守るために「私は好きではなかった」と酷い言葉を投げつけるのですが、彼も彼でジョーンを傷つけることに傷ついているように見えました。

このシーンは少年の頃のアランが、クリストファーが亡くなったと知らされた時に「彼とは友達じゃなかった」と嘘をつくシーンと似ていますね。

このシーンがあったからこそ、アランの言っていることは嘘で、本当はジョーンを尊敬し好きだったのだと思うことができました。

とても悲しいシーンです。

 

 

 

 

同性愛が罪であった時代

 

今でも同性愛者に対する差別が全くなくなったわけではないですが、同性愛が罪なんて信じられない時代ですよね。

「1885年から1967年までに約4万9000人の同性愛者の男性が有罪」というのは、どれほど不当なことが行われてきたのか、自分にはとても想像できることではありません。

今作品は数学者のアラン・チューリングに光を当てただけではなく、弾圧されてきた当時の同性愛者たちを救う映画でもないでしょうか。

 

 

 

 

自ら命を絶ったアラン・チューリング

 

残念なことに、アランは強制的なホルモン治療を行った1年後に自ら命を絶ってしまいます。41歳という若さです。

人間は自分とは違う人間に恐れを抱いてしまうものですが、「違い」を異端だと見なし傷つけることで、何が生まれるのでしょうか。

アランが語っていたように、傷つけた者に残るのは一時の満足感と虚しさだけです。

それならば、普通じゃないことがどれだけ素晴らしいことか。

 

 

 

 

まとめ

 

「誰も予想しなかった人物が誰も想像しなかった偉業を成し遂げる事だってある」

これは今作品において重要なセリフですよね。

偉業と言えなくても、人はその人にしかない役割というのがあると思います。

人々が感じることや考えることが違うからこそ、世の中はバランスがとれているのだと思います。

それを今作品のアラン・チューリングから学ぶことが出来ました。

ただの歴史ドラマではなく物語としても、とても楽しむことのできる映画でした。