お月さまいくつ

オタクの日記

命の定義が揺れる世界『ブレードランナー 2049』感想

 

ブレードランナー 2049
Denis Villeneuve 『Blade Runner 2049』 (2017)

 

 

 

評価:☆☆☆☆

 

SF映画は出来るだけ映画館で観たい!と思っているので行ってきました、

『ブレードランナー 2049』です。

持病を持っているため163分ある今作品は耐えられるか不安だったんですけど、やっぱり劇場で観て正解でした。

これは完璧な音響と大スクリーンで観てこその映画です。

今作品が『ブレードランナー』の続編とは知らずに観たのですが、前作や原作がまだでも十分に楽しめました。

 

 

 

 

あらすじ

 

新型レプリカント(アンドロイド)のKが旧型レプリカントを解任(処理)させる仕事をする中で、ある奇跡的な事実を知ることになるお話

 

 

 

『ブレードランナー 2049』感想:美しく、悲しい

 

とにかく悲しかったです。

人間が嫌になります。

アンドロイドに感情や倫理など与えるだけ与えて、どうして人間と同じ扱いをしてあげられないのでしょうか。

奴隷解放のために組織を組むアンドロイドや、支配のための生殖を行おうとするアンドロイドが出てくるのですが、まるで人間の歴史を繰り返しているようです。

アンドロイドは産まれた瞬間から過酷な人生を送ることが決まっています。

それならば心なんて持たせなければ良かったのに。そう思いましたが、アンドロイドの心も人間のための心なんです。人間が支配するものでしかありません。

 

 

 

 

より人間らしく、人間を超えた存在に

 

Kをより人間らしくしていたのは、偽装された幼い頃の記憶でした。

その記憶がレプリカントから生まれた”子”から移植されたものだと知ったときは、もう本当にやり切れない気持ちでいっぱいで。悲しくて仕方なかったです。

雪の降る中、ゆっくりと倒れ込み空を見上げるKは何を考えていたのでしょうか。

愛する人を失い、自分の存在さえ確かなものはないのです。

それでもKはデッカードを奴隷解放のために始末するのではなく、娘に再開させることを選びます。

その優しさが人間よりも人間らしく素晴らしいものなのに、どうして物語は彼を幸せにしてあげられなかったのだろうと悔しくなりました。

冒頭の旧型レプリカントについてもです。

新型のレプリカントですら同じように人間から解放されようと企てているのならば、問題があり考え直さなければならないのは人間の方だと思わざるを得ないです。

命は本当に命あるものだけのものなのか。

心さえなければ、もっとぞんざいに扱えるのに。でも、ここまでレプリカントが人間的であるならば、人間は命の在り方を考え直さなければならないと思います。

映画を観て、とても不思議で興味深い疑問がたくさん生まれました。

アンドロイドに同情するわたしはおかしいでしょうか?

物語はそれほど暗く悲しかったです。

 

 

 

 

壮大な世界観、全てを呑み込もうとする音楽 

 

映像

 

なんと言っても今作品は映像が美しい。

SF映画はテクノロジーの進化と共にあるジャンルですよね!

だからこそSF映画は映画館で観てこそだと思っています。

 

『ブレードランナー 2049』の世界に自然はなく、建物は密集し、飢餓を回避するために遺伝子組み換えされた食品が出回っています。

わたしは自然が大好きで中途半端に密集した街なんかが本当に嫌いなんですが(住んでいるところがそんな感じ)、今作品のように完全に人間の支配した世界を見たときに美しいと思ってしまいました。

上空から街を見下ろすシーンがいくつもあります。

廃退した街、ネオン街、瓦礫の山に、隙間なく密集した灰色で統一された建物たち。

訪れて欲しくない未来、訪れようとしている未来ですが、どこか心惹かれませんか?

ただの木が価値ある時代です。木を見たことのないレプリカントは、枯れた木の写真を見て「美しい」と言います。

新しい時代は新しい価値観を生みます。

次々と変化していく文明を目の前に、自分が何を感じるのかがとても気になるんです!

『ブレードランナー 2049』は来る時代を疑似体験できる映画かもしれません。

完全にぶっ飛んだ未来ではないからです。現在の延長線上にありえるひとつの世界ですよね。

 

 

音楽

 

そして、その美しい世界すらも呑み込もうとせんばかりの音楽です!

劇場ではあまりの爆音に耳が痛くなる時も(笑)

美しさとおぞましさっていうのは紙一重なのでしょうね。

恐怖と美しさを同時に感じさせる音楽に、鑑賞者は呑み込まれるしかありません。

抵抗のすべなく暗い世界へと引きずり込まれてしまいます。

 

 

 

 

まとめ

 

もう今作品に関してはただひたすら美しいとしか言えません。「美しい」ばかり連呼してすまんな!(わたしあるある)

 

物語はどうしてKを幸せにしてあげられなかったのかと言いましたが、雪の降るなか空を見上げたジョー(K)が幸せを感じていたら?ということも考えました。

劇中ではジョーが目に涙を溜めるシーンが何度かありましたが、エンドではどうでしょうか。

デッカードとステリンを再会させたことでジョーが満たされた気持ちになっていたら?

どうかどうか、そうであって欲しいです。

 

 

今作品は圧倒的な世界観でした。

レプリカントの検査も面白かったです。特定の言葉を復唱させて反応を見るんですよね。観ててゾワゾワしました。

あまりに有名すぎる原作の『アンドロイドは電気羊の夢を見るか?』も、独特な世界観と言葉の言い回しだと聞いています。

ずっと読みたいな~っと思ってはいたんですが、それより先に『ブレードランナー 2049』の公開が先に来ちゃいました。

 

今作品のように、ダークな内容なのにエンタメとしても扱える完璧な作品を作る人たちに凄く憧れます。完璧っていうのは、鑑賞者にとってではなく、製作者にとってです。

製作者が自分の理想を容赦なく追求するからこそ、わたし達は楽しめるし、理解しようと今までにない感情や考えを芽生えさせることができるのです。

とても素晴らしいことだと思います!